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クローバー


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蝉の鳴き声で目が覚める。

氷を入れたグラスに麦茶を注ぐ。

誰もいない部屋に、氷のきしむ音が響く。

窓から外を眺めれば
真っ青な空に高く積みあがった雲、
たくさんの葉をつけた木々の緑が
気持ちよさそうに揺れている。

夏休み、なんの予定もない、
一日の始まり。


せっかくの休み、

何かしないともったいない。

朝昼兼用の中途半端な食事を取りながら考える。

「部屋の掃除でもしよっかな。」


全ての窓を全開にし、玄関のドアを開く。

八月のやさしい風が部屋を通り抜ける。

さぁ、始めよう!!

 散らばった本や服をまとめ、掃除機をかける。

額に汗がにじむが、
後でシャワーをすると思えば気にはならない。
 

いらないモノとそうでないものが
どんどん積み上げられていく。

部屋はあっという間には歩くのも困難に。
 

机の整理をしている時だった。
引き出しの奥から出てきた小さな箱。

フタを開けると、中身は空。
だけど、敷かれた白いハンカチには、
キミドリ色のシミがついていた。



 ・・・。


それは、
今から思い出せばもう、
3年も前のことになる。


 まだデートの意味もよく分からなかった幼い僕等は、
その場所に、なんとなく公園を選んだ。

手をつなぐことにさえ慣れない二人がベンチに座る。
緊張する僕をよそにはしゃぐ君。

「ちょっと、待ってて」

と、君は草むらで何かを探し始めた。

「これあげるから、大事にしてね。笑」

目を閉じさせられた僕の手に、
そっと置かれた小さなプレゼント。

それは、
4つ葉のクローバーだった。

 その幼さゆえ、そのちっぽけな恋に

永遠を感じていた僕は、
結婚式にでも見せて驚かせてやろうと
彼女に内緒で押し花にし、
白いハンカチをしいた、

その箱に大事にしまっておいた。

だけどそれからしばらくは手つけずで、
記憶から少しの間遠ざかっていた。


もちろん、永遠なんてなかった。


風の強い夜だった。
電話の向こうで泣く君は、
突然僕に別れを告げた。

 初めての失恋。
辛過ぎて訳も分からず、
涙も出なかった。

そんな時思い出した4つ葉のクローバー。

手に取り、少しでも楽になるかと、
夜の風の中にそっと投げいれた。

 「こんなことになるなら、
始めから付き合うんじゃなかった」

 そう、僕だけが悔やみ続けて、
結局友達にも戻れなかったね。

 キミドリ色のシミ、
それはあの、
4つ葉のクローバー。

 きっと、
染み込んだ水分が、時が経ち、
初めて色をつけたのだろう。
 

それに気づいたのと同時に、
もう1つ、思う事があった。


どうして今なのか、
それは僕には分からない。
だけどこれは、間違いなく、確かな気持ち。


「君と付き合えて良かった。」

安らかな夕暮れの風が部屋を通り抜ける。

今度いつか出会ったその時は、
きっと二人は友達だ。


掃除を終え、
氷を入れたグラスに麦茶を注ぐ。
誰もいない部屋に、氷のきしむ音が響く。











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